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常識の逆転現象
日本でマンションを購入する際、多くの人がまず確認するのは「日当たり」「眺望」「静けさ」です。
しかし、バンコクで同じ基準を持ち込むと、現地の不動産業者からは「そこは重要ではない」と言われることが少なくありません。
タイでは、外国人所有枠の有無や立地条件こそが、購入の可否や資産価値を左右する最大の要素だからです。
外国人所有枠「75%」はまだ検討中
2024年6月、タイ内閣はコンドミニアム法の改正を検討する方針を示し、外国人所有枠を現行の49%から75%に拡大する案を承認しました。
ただし、これは閣議での方針決定にとどまり、法改正はまだ成立していません。実際に施行されるには、国会での審議・承認が必要です。
- 現行ルール:外国人は建物全体の延床面積の49%まで所有可能
- 改正案:75%まで拡大(ただし未施行)
- 実務上の影響:現時点では49%ルールが適用され続けている
人気物件では外国人枠がすぐに埋まるため、「購入できるかどうか」はまずこの枠の空き状況に左右されます。
日本とタイの「常識」の違い
日本の常識
- 日照・眺望が資産価値を決める
南向きや日当たりの良さが価格に直結。隣に高層ビルが建つと「日照が悪い=価値が下がる」と考えられる。 - 築年数で価値が下がる
新築が最も高く、築年数が経つと資産価値は下落するのが一般的。 - 外国人購入制限なし
国籍による制限はなく、誰でも条件を満たせば購入可能。
タイの常識
- 日差しは避けたい
強烈な西日は敬遠され、直射日光が少ない部屋が好まれる。 - 隣の高層ビルは気にしない
眺望よりもBTS/MRT駅からの距離や商業施設へのアクセスが優先される。 - 共用施設が資産価値を左右
プール、ジム、ラウンジなどホテルライクな設備が重視される。 - 外国人枠が存在
外国人は建物全体の49%までしか所有できない。人気物件では枠が埋まると購入不可。
事例:外国人枠が投資判断を左右する
例えば、バンコク中心部のスクンビット地区にある新築コンドミニアムでは、販売開始から数か月で外国人枠が埋まるケースが多発しています。
ある物件では、全体の49%にあたる約200ユニットが販売開始から半年で完売し、その後は外国人が購入できなくなりました。
一方で、同じ物件でもタイ人枠は残っており、外国人は外国人枠内の中古市場を通じてしか購入できない状況になっています。(その場合は、タイ人名義で購入して賃貸する方法は可能ですが、タイ人名義枠をタイ人パートナーなどの名義で購入すると、当然名義はタイ人となり日本人は権利がないため後日追い出される危険性あり。)
このように、「日当たりが悪いからやめる」よりも「外国人枠が残っているかどうか」が死活問題となるのがタイの現実です。
制度の揺らぎがリスクになる
「75%まで拡大するかもしれない」という報道は投資家にとって朗報に見えますが、実際には不確実性そのものがリスクです。
- 施行時期が未定
- 条件が変更される可能性あり
- 政治的判断で見直される可能性もある
したがって、現時点で「75%まで買える」と前提して動くのは危険であり、実務的には49%ルールを前提に判断する必要があります。
🏢 新築 vs 中古 コンドミニアム比較表(タイ)
| 観点 | 新築コンドミニアム | 中古コンドミニアム |
|---|---|---|
| 外国人枠 | 建物全体の49%まで。人気物件は販売開始直後に枠が埋まることが多い | 同じく49%ルールが適用。枠が埋まっていれば外国人は購入不可 |
| 購入ルート | デベロッパーから直接購入 | 既存オーナー(外国人)から購入 |
| 価格傾向 | 新築プレミアムが高く、完成直後が価格のピークになりやすい | 新築より割安。築数年で価格が落ち着き、利回り重視の投資家に人気 |
| 選択肢の幅 | 人気物件は早期完売。外国人枠が埋まると購入できない | 枠に空きがあれば購入可能。物件によっては「外国人が買える部屋」と「タイ人しか買えない部屋」が混在 |
| 資産価値の見方 | 日本人感覚では「新築=安心」だが、タイでは必ずしも資産価値が維持されない | 割安で購入でき、賃貸需要が安定している物件も多い |
| 実務上の注意点 | 契約時に外国人枠の残数を必ず確認 | 売買契約前に登記局で外国人枠の空き状況を確認する必要あり |
まとめ
日本では「日当たりが悪い=資産価値が下がる」という常識がある一方、バンコクでは「外国人枠が埋まっている=購入不可」という制度的制約が最大のリスクです。
さらに、外国人枠の拡大は確定ではなく検討中であり、現行法は49%のまま。
コンドミニアム購入を検討する際には、
- 現行ルールを前提に判断すること
- 制度改正の進展を注視すること
- 立地・アクセス・共用施設を重視すること
この3点を押さえることが、日本人にとって最も現実的で安全な戦略となります。


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