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日本の外国人介護人材受け入れ制度は誰のため?
1. 喫茶店での会話から
「どうも、盤谷爺さん。日本の介護現場って、外国人がどんどん入ってきてるんでしょ?」
バンコクのカフェで、タイ人の友人がストローをくわえながら聞いてきた。
「そうだよ。EPAだの特定技能だの、名前は立派だけど、現場は人手不足で火の車。で、日本政府は“外国人に来てもらえば解決!”って言ってるわけ」
「へえ。でも円安でしょ?給料もそんなに高くないんでしょ?なんでわざわざ日本に?」
「そこがミソなんだよ。制度の説明は“日本人向け”にできてるから、外国人の本音とはズレてるんだ」
2. 建前のオンパレード
日本の官僚や受け入れ機関が並べる言葉は美しい。
- 「国際貢献」
- 「技能移転」
- 「質の担保」
まるで教科書の脚注みたいに整然としている。
でも現場の声を拾うと、こんな会話が聞こえてくる。
「ねえ、なんでこんなに試験が多いの?」
「だって“日本人に安心してもらうため”だよ」
「え、私たちの生活のためじゃなくて?」
「うん、制度は日本人の安心のためにあるんだ」
3. 天下りの香り
受け入れ機関の代表格、JICWELS。名前だけ聞くと国際的で立派だが、実態は厚労省OBの天下り先として有名だ。
「なるほど、だから制度の説明は“日本人向け”に偏るのか」
「そうそう。外国人労働者の実情よりも、“制度はちゃんと機能してますよ”って国内にアピールするのが大事なんだ」
皮肉な話だ。介護現場で汗を流すのは外国人なのに、制度の物語を語るのは日本人。
4. タイ人の現実
さて、タイ人の視点に戻ろう。
「日本で働いたら家族や地域に誇られるんでしょ?」と日本人は思いがちだ。
でもタイ人の友人は笑い飛ばす。
「誇り?そんなのより仕送りだよ。家族が欲しいのは“日本で働いた経歴”じゃなくて“毎月の送金”」
円安で仕送り額が目減りすれば、「日本で働いた」という肩書きは空っぽになる。
むしろ「韓国や台湾の方が稼げるんじゃない?」という声が出てくるのが現実だ。
5. 日本人の安心 vs 外国人の現実
ここで整理してみよう。
| 日本人向けの建前 | 外国人の現実 |
|---|---|
| 「試験に合格してるから安心」 | 試験は負担。合格しても給料は上がらない |
| 「国際貢献・技能移転」 | 実際は人手不足の穴埋め |
| 「日本で働いた経歴は誇り」 | 評価軸は仕送り額と生活改善 |
| 「制度は整っている」 | 円安と低賃金で魅力は低下 |
6. 会話で浮かび上がる乖離
「ねえ、なんで日本は“外国人のため”って言わないの?」
「だって本音は“日本人のため”だから」
「じゃあ、制度の名前を変えたら?“日本人安心確保制度”とか」
「それだと正直すぎて官僚が困るんだよ」
二人で吹き出した。だが笑い話で済まないのは、現場で働く外国人たちだ。
7. 未来への問い
このまま円安と賃金停滞が続けば、タイ人を含む外国人は「日本離れ」を加速させるだろう。
残るのは「学習や経験を買いに来る層」だけ。
つまり、日本の介護現場は「出稼ぎ労働者」ではなく「キャリア形成目的の短期滞在者」に依存することになる。
「それで人手不足は解決するの?」
「いや、むしろ悪化するかもね」
8. 結び ― 誰のため?
制度の建前は立派だ。だが現場の外国人にとっては、試験も制度も「日本人の安心のため」に設計されている。
日本の外国人介護人材受け入れ制度は誰のため?
答えはシンプルだ。
「外国人のため」ではなく、
「介護現場のため」でもなく、
“日本人の安心のため”。
その現実を直視しない限り、制度は形骸化し、現場の人手不足は解決しない。


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