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タイの高齢者(60歳以上)の約半数が貯蓄ゼロ(または極めて少ない)である主な理由は、長年の低所得・インフォーマル雇用依存、家族・現役世代への経済的負担、公的年金・福祉の低水準、貯蓄文化・制度の未成熟が複合的に絡んでいるためです。2024-2025年の調査(National Statistical OfficeのSurvey of Older Persons、NESDC、Krungsri Researchなど)から、45.7%〜ほぼ50%が高齢者に貯蓄なし(または50,000バーツ未満が多数)と報告されており、これは「豊かになる前に老いた」タイ特有の構造的問題を反映しています。
主な理由の詳細(データに基づく)
- 生涯を通じた低所得とインフォーマルセクター依存
- タイの労働力の半数以上がインフォーマル(非公式)セクター(農業、自営業、零細事業など)。これらの多くは社会保障基金(SSO)の強制加入対象外で、任意加入(Section 40)も低く、年金・貯蓄制度にアクセスしにくい。
- 現役時代に低賃金(特に農業・地方で月5,000-10,000バーツ程度)が続き、生活費・子育て・教育費で手元に残らない。
- 結果:退職時に貯蓄がほとんど蓄積されない。2023-2025年のデータでは、高齢者の約半数が貯蓄ゼロ、貯蓄ありでも41.4%が50,000バーツ未満(約20万円以下)で、生活できる額ではない。
- 家族・子供への送金・支援負担が重い
- 伝統的に子供の教育・結婚・住宅に多額を投じ、親世代が貯蓄を優先せず。
- 核家族化が進む中でも、子供からの仕送り依存が逆転(高齢者が子供を支えるケースも)。借金をしてまで子供を支援し、高齢者自身の借金率がほぼ50%に達する。
- 2025年の報告では、高齢者の約半数が個人・家族債務を抱え、貯蓄どころか赤字生活。
- 公的年金・老齢手当の低水準
- 普遍的老齢手当(OAA):月600-1,000バーツ(約2,500-4,000円)と極めて低く、生活費(特に都市部で月3,000バーツ以上の貧困線)をカバーできない。
- 社会保障基金の年金:正式雇用者限定で、加入者が少なく、給付額も月数千バーツ程度。インフォーマルワーカーはほぼ無加入。
- これにより、「老後資金は子供頼み」という発想が定着し、個人貯蓄のモチベーションが低い。
- 貯蓄・金融リテラシーの低さ + 制度の未整備
- 多くの高齢者が低教育(初等教育未満が多数)で、金融商品(預金、保険、投資)の利用が低い。
- National Savings Fund(NSF)のような任意貯蓄制度はあるが、加入率が低く、強制貯蓄がない。
- 全体として、91%が貯蓄していると答える現役世代でも、緊急資金6ヶ月分未満が77%、退職計画未達が多数。高齢世代はさらに厳しい。
- 医療・生活費の高騰と経済停滞
- 高齢化で医療費が増大(慢性疾患多発)。
- 低成長・家計債務高で、現役時代に余裕資金が生まれにくい。
- 結果:貧困高齢者率が18-34%(地域による)と高く、貯蓄ゼロが常態化。
まとめ:なぜ「約半数」なのか?
タイの高齢者は現役時代に十分な収入・社会保障がなく、家族依存の文化が貯蓄を後回しにし、公的セーフティネットが貧弱なため、老後に貯蓄ゼロが標準化してしまった。2025年のデータ(Nation Thailandなど)でほぼ50%が貯蓄なし + ほぼ50%が債務ありと指摘されるのは、この構造的欠陥の結果です。
政府はNational Savings Fundの推進や退職準備教育を強化中ですが、インフォーマルセクターの正式化が進まない限り、高齢貧困の拡大は避けられず、子供送金依存の崩壊を加速させる要因にもなります。日本のように厚生年金中心の基盤がないタイでは、この問題がより深刻です。



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