知らなかったでは済まない─タイのショッピングモールで偽物を買うリスク

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1. 安さの誘惑は“合法”に見える顔をしている

バンコクのショッピングモールを歩いていると、ふと目に入る「ブランドバッグ 2,000バーツ」の札。
「え、シャネルが7,000円?」「ロレックスが1万円?」──旅行者なら誰もが一瞬、財布の紐を緩めそうになる。
しかも売っているのは、路地裏の怪しい屋台ではなく、冷房の効いた立派なモールの一角。
「モールで売ってるんだから大丈夫でしょ」と思った瞬間、あなたはすでに罠に片足を突っ込んでいる。

2. 摘発と黙認の“いたちごっこ”

タイ当局は定期的に「偽ブランド撲滅キャンペーン」を打ち出す。
2025年5月には、バンコク中心部のMBKセンターで100店舗以上が一斉摘発され、ルイ・ヴィトンやグッチの偽物が山のように押収された。
ニュース映像には、ブランドロゴが並ぶ棚を次々と封鎖する警察官の姿が映し出され、まるで「正義が勝った」かのような雰囲気が漂った。

だが、数か月後に同じ場所を歩くと──あら不思議。
別の店が同じように“新品”の偽物を並べている。
「摘発?ああ、あれはショータイムだよ」と現地の商人は笑う。
要するに、摘発と黙認は繰り返される。観光客が求める限り、供給は止まらない。

3. 法律とリスク:観光客も“共犯者”

ここで重要なのは、**「買う側も違法」**という点だ。
タイ国内法では、偽物の販売だけでなく購入も処罰対象になり得る。
さらに恐ろしいのは帰国後。日本の税関で見つかれば、商標法違反として没収・罰金の可能性がある。

「いや、知らなかったんです」「観光の記念にちょっと…」──そんな言い訳は通用しない。
法律は観光客の“うっかり”を免罪符にしてはくれないのだ。

4. 実例:笑えない“安物買いの代償”

  • ケース1:空港での没収劇
    日本人旅行者が「ブランドバッグを安く買えた」と喜んで帰国。成田空港で税関検査に引っかかり、バッグは没収。さらに長時間の事情聴取でフライト仲間を待たせ、旅の余韻は一瞬で吹き飛んだ。
  • ケース2:SNSでの晒し上げ
    「タイで激安ブランドゲット!」とSNSに投稿した日本人。コメント欄は「それ偽物だよ」「違法だよ」の大合唱。本人は“いいね”を稼ぐつもりが、逆に信用を失った。
  • ケース3:現地での“おとり捜査”
    過去には観光客が偽物を買った直後に警察に声をかけられ、罰金を支払わされた事例もある。観光客を狙った“お小遣い稼ぎ”の一環だが、払う側にとっては冗談では済まない。

5. なぜ「普通に売られている」と錯覚するのか

  • モールの権威性:冷房の効いたショッピングモール=安心、という思い込み。
  • 観光客心理:「安いから記念に」という軽い気持ち。
  • 制度的グレーゾーン:賄賂や黙認の構造があるため、表向きは“普通に”売られているように見える。

つまり、旅行者の目には「合法的に見える違法品」が堂々と並んでいる。
この錯覚こそが最大の罠だ。

6. 旅行者が払う“見えない代償”

偽物を買うことは、単なる財布の問題ではない。

  • 時間の浪費:空港での事情聴取、旅行の思い出が台無し。
  • 社会的信用の失墜:SNSや周囲の目は冷たい。
  • 国際的な評判:「日本人は偽物を平気で買う」というレッテルを貼られる。

安さに釣られて手にしたバッグが、結局は自分の評判を傷つける爆弾になるのだ。

7. まとめ:安物買いの代償は“高すぎる”

タイのショッピングモールで“普通に”売られているように見える偽物。
だが、その裏には摘発と黙認の繰り返し、観光客を狙ったビジネスモデル、そして法的リスクが潜んでいる。

「安いから」「記念だから」と軽く手を出した瞬間、あなたは犯罪者の片棒を担ぐ共犯者になる。
そしてその代償は、没収や罰金だけでなく、旅の思い出や社会的信用まで奪っていく。

結論はシンプルだ。
──偽物は買わない。それだけで旅はずっと安全で、ずっと楽しい。

アイロニカルな余韻

「ロレックスが1万円? それは“時を刻む”どころか、あなたの人生の貴重な時間を奪う時計かもしれない。」
「シャネルのバッグ? その中に入るのは思い出ではなく、空港での事情聴取の記録かもしれない。」

安物買いの代償は、想像以上に高い。
──それを“知らなかった”では済まされないのだ。

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